WellnessTips>>産婦人科専門医・高橋怜奈さん
保湿ケアで大切な粘膜を保護 「膣活」で毎日を心地良く
デリケートゾーンケア、してますか?
ここ数年、ヘルシー&ビューティー感度の高い方たちの間で注目されているデリケートゾーンケア。けれども、耳慣れない言葉だけに「興味はあるけどまだトライしたことがない」という方もいるのではないでしょうか。
デリケートゾーンケアといえば、肌に優しいソープなどを使ったウォッシュケアが一般的ですが、最近はもっと進んで、女性特有のプライベートパーツである「膣」をケアする「膣活」を始める方が増えています。そこで今回は、元プロボクサーで産婦人科専門医である高橋怜奈さんに、「膣ケア」が大事な理由と「膣活」のポイントについてお伺いします。
【目次】
・自分の体を知ることはヘルシー&ビューティーの第一歩
・膣炎やカンジタ、更年期の悩みにも
・自分と向き合う時間を大切に
自分の体を知ることはヘルシー&ビューティーの第一歩
——腸内環境を整える「腸活」が定着して、最近では膣をケアして妊娠に備えたり心地良い体のベースをつくったりする「膣活」が注目されつつあります。
さまざまなケア方法がありますが、セルフケアをおこなうメリットは、体を健やかな状態に保つだけではなく、自分の体を知る機会につながることです。特にデリケートゾーンは意識しないと目に入らない箇所なので、ケアをするときに見たり触ったりすることで、「いつもはない湿疹ができてる」などトラブルや病気のサインに気づけるように。
日本では、以前はデリケートゾーンに関して“人に話すのは恥ずかしいこと”という風潮が根強くあったため、学校や家庭でケアについて教えられることはほとんどありませんでした。実は外来で、「結婚しているけれど1回もセックスで挿入できたことがない」と相談に来る方は意外と多いのですが、これも “デリケートゾーンにさわるのは悪いこと”“性に関することはいやらしいもの”と、子どもの頃に大人から擦り込まれたことによる、性に対する嫌悪感や恐怖心が原因であるケースも。
デリケートゾーン=セクシャルではなく、自分にとって大切なプライベートパーツ。だから自分で状態を把握しておく必要があるし、自分自身で大事にする。誰もがこういう意識を持てるようになるといいですね。
——恥ずかしいので婦人科に行くのをためらうという話もよく聞きます。少しずつ意識が変わって、肌と同じようにケアすることがスタンダードになるといいですね。ではデリケートゾーンケアをおこなう上でのポイントはありますか。
デリケートゾーンは名称の通り繊細なんですね。女性器は膣や子宮、卵巣からなる内性器と、膣の入口付近の外性器で構成されていて、膣内や外性器の小陰唇は粘膜で覆われています。粘膜と粘膜に近い皮膚は目の周りと同じように薄くて敏感なので、ウォッシュケアをするときには、専用のソープなどをしっかり泡立てて優しく洗ってください。そして洗うのは外性器のみ。膣内は絶対に洗わないでください。
——膣内を避けるのはなぜでしょう。
膣内には善玉菌と悪玉菌が常在しています。健康な膣は、膣内が酸性(PH3.7〜4.5)に保たれていることで雑菌の侵入を防ぎ、悪玉菌の増殖が抑えられている状態です。善玉菌が死滅して悪玉菌が増え膣内の菌バランスが崩れると、匂いなどのデリケートゾーンのトラブルや病気を引き起こします。そのためデリケートゾーンを清潔に保ち、雑菌が繁殖しない環境にしておくことは大切です。ですが、ソープで膣内を洗うと善玉菌を洗い流してしまうので、外性器のみにとどめましょう。
そのほか善玉菌が減って悪玉菌が増える原因としては、主に疲労やストレス、抗生剤の服用などがあります。
膣炎やカンジタ、更年期の悩みにも
——膣内の常在菌のバランスを保つためにも、ウォッシュケアは大事なんですね。そのほかに、取り入れておきたいデリケートゾーンケアはありますか。
「保湿」は一つのキーワードになると思います。
更年期や閉経後に萎縮性膣炎になる方がいらっしゃいますが、これは女性ホルモンのエストロゲンが低下することで膣壁や外性器が薄く乾燥して炎症を起こすものです。治療には軟膏の処方や女性ホルモン投与などがありますが、減少したラクトバチルスを補う、美容液などで保湿して潤いを保ちながらマッサージをするといったセルフケアも、不快感を和らげる方法の一つです。
また更年期ではなくても、ストレスやホルモンバランスの乱れなどによって、セックスのときに性交痛を感じる方がいます。この場合も膣が潤っていたり、普段からマッサージをして柔軟性を持たせておくと痛みを感じにくくなります。せっかくのパートナーとの大切な時間ですから、快適にしたいですよね。
——“膣が潤う”ことは女性のQOLを上げるカギになりそうです。KNOW YOUR ORIGINの「Beauty Charge -Femcare-」をお使いいただいた方からは「初めて膣が潤う感覚を知った」という声がたくさん届いています。
粘膜が乾燥すると善玉菌が増えにくかったり、反対に悪玉菌が増えやすかったりします。ですから、おりものの量が少ない、デリケートゾーンが乾燥しているという状態はあまり良くありません。かゆみがある、むずむずする、おしっこが近い感じがする、ヒリヒリするといった違和感があり、受診しても原因がわからないときには、デリケートゾーンが乾燥している可能性も考えられます。
例えば、カンジタ膣炎は、健康な膣にも常在するカンジタ菌(真菌)が膣内で異常増殖して発症するのですが、その理由の一つに洗いすぎによる善玉菌の減少が挙げられます。カンジタの予防として、蒸れを防いだり清潔に保とうと洗いすぎてしまったりして善玉菌が減少し、カンジタ膣炎を発症してしまう方もいらっしゃいます。
そのため必要以上に洗いすぎず、適度にデリケートゾーンを保湿することは、粘膜の保護として良い影響を与えると思います。
自分と向き合う時間を大切に
——膣活のキーワードは「体を知ること」と「保湿」だとわかりました。「知る」上ではセルフケアと合わせて医療機関を利用することも大事だと思いますが。
デリケートゾーンケアを通して普段の体の状態を知っておくと、医療機関で受診したときにも“何が不調と感じるのか”を伝えやすくなります。かといって、あまりにセルフケアを過信すると病気に気づくのが遅れる可能性もあるため、定期的に婦人科を受診することをおすすめします。
日々のセルフケアで不快感がなくなったのであれば、それは自分に合っているということなので継続する。なんとなく不調が解決されなくなっている感じがしたら医療機関を頼る。そういう利用の仕方でもいいと思います。例えば膣の乾燥の場合、年齢によってはホルモン補充などの根本的な治療をしたほうが、更年期症状を幅広く抑えられることがあります。
皆さん、何か特別な症状を感じていなければ病院に行くべきではないと思いがちですが、常に快適で心地良い状態をキープする目的で医療機関を受診することは決して悪いことではありません。人生100年時代、未来に向けてQOLを高めるためにできることは、膣ケアも含めてたくさんあります。自分と向き合う時間を大切にして、一人ひとり自分に合った方法を見つけられるといいですね。
Profile
高橋怜奈(Rena Takahashi)
産婦人科専門医、医学博士。山王ウィメンズ&キッズクリニック院長。産婦人科YouTuberとして、病気や性の疑問などについてYouTubeやInstagram、X、TikTokでの発信も積極的に行う。元プロボクサーでもある。
公式インスタグラム:https://www.instagram.com/renatkhsh/
公式X:https://twitter.com/renatkhsh
公式YouTubeチャンネル:https://t.co/JjNnGWbt8z