漢方薬剤師・大久保愛さんのお悩み別セルフメディケーション術
vol.1 漢方医学で体づくり
季節の変わり目や環境の変化によって揺らぎやすい女性の身体。なんとなく不調を感じていても、日々の忙しさに見て見ぬふりをしていませんか。時には自分を労ることも大切です。
この連載では、薬剤師、国際中医師であり、薬膳料理研究家の大久保愛さんが、漢方医学の考えに基づいて、日常生活に役立つケアの方法をお伝えしていきます。
漢方医学はセルフメディケーションの味方
日本では東洋医学として知られる「漢方医学」。みなさんは薬膳などが思い浮かぶのではないでしょうか。また、何千年も昔から続く経験則によって成り立つ医学ということは、多くの方がイメージされることと思います。
古代には現代のような一つの成分を精製した医薬品も、外科的な知識や技術もなかったことから、当時の人たちが健康に生き抜くために自分の治癒力を信じ、どうにかして編み出した知恵、それが漢方医学と考えることができます。
何千年もの間、幾度となくトライアンドエラーを繰り返し、現代に受け継がれた漢方医学は、東洋医学の中で唯一医薬品の地位を獲得。信頼を得ている医学といえるでしょう。
そして、中国医学の「整体観念」という理論を考え方の柱とする漢方医学では、心と体の傾向、食べるとよい食薬、セルフケア方法などが、おおよそ季節ごとに決まっていると考えられているのです。
変化に負けない体をつくる「気・血・水」
生活環境や人間関係、気候など、生きているとさまざまな変化が生じます。加えて女性の場合は月単位、年単位で女性ホルモンのバランスが大きく変動することも。
このようなとき、私たちの体では、体を一定の状態に保とうとする機能が働きます。これを恒常性の維持といい、免疫系・神経系・内分泌系の3つが体の中でお互いにバランスをとりながら、体を健全な状態に維持しようとするのです。
漢方医学では、こうした体の働きを生命維持に必要な「気・血・水」の3つの要素とリンクさせて捉えています。免疫系=気、神経系=血、内分泌系=水です。
何千年にも及ぶデータの蓄積によって構築されている漢方医学は、このように現代の医学とリンクして考えることができます。「漢方」と聞くとハードルが高く、おまじないのようなものと捉えている人も多いと思いますが、医学の発達とともに漢方医学も医療としてより具体的な表現ができるように進化しているのを感じます。
不調の要因のおよそ半分は生活習慣に原因があるといわれています。中でも毎日必ずおこなう「食事」の内容の見直しは、未来の心と体を元気で若々しい状態に保つために必要不可欠です。体にとって何か良いことをしたいときには、まずは漢方医学を柱とした食薬理論を活用して食事の見直しを図り、食薬習慣を取り入れることをおすすめします。
次回からは、皆さんのお悩みに対応した、漢方医学の考え方に基づくセルフメディケーション術についてご紹介していきます。
Profile
大久保 愛(Ai Okubo)
薬剤師、漢方カウンセラー。北京中医薬大学で漢方・薬膳・東洋の美容などを学び、日本人で初めて国際中医美容師資格を取得。漢方薬局、調剤薬局、エステなどの経営を経て、漢方・薬膳をはじめとする医療と美容の専門家として商品開発や執筆、企業コンサルティングなどに携わる。