NYレポート04
アメリカ人女性たちは自分の体をどう見ているか
Case3:サラ(40代)

米国在住23年、NYを拠点に活動している、フリーランス・ライターのTOMOです。今回も、アメリカ人女性たちが自分の体をどう考えているのか、実際に聞いた生の声をお伝えします。60代のデボラ80代のドリーに続き、今日は40歳になったばかりのサラ(仮名)に話を聞きました。

バジャイナ?それともヨーニ?

「女性器をバジャイナって言わないで」。私がインタビューを切り出すと彼女はこう言いました。「バジャイナの語源って、剣を収めるための『鞘』っていう意味だって知ってた?」と、彼女はその端正な顔の眉間にしわを寄せ、不快感をあらわにして言いました。「じゃあ、一体何と呼べば?」という問いに、「ヨーニ(Yoni)よ」と彼女。

「ヨーニはサンスクリット語で女性器(子宮や外陰部)を意味すると同時に、宇宙の根源、源を指す言葉でもあるの」

バジャイナは、鞘、つまり剣を受け止める役目のものなので、剣によってその存在を定義されることが暗に示されていて、受動的なイメージ。これに対しヨーニは、女性の性力の原動力になっており、それは宇宙の源、聖なる場所と認識され、崇拝の対象とみなされるというのです。

ヨーニのほうが俄然ポジティブでパワフルなイメージ。バジャイナとはだいぶイメージが違うといえそうです。
NYレポート04  アメリカ人女性たちは自分の体をどう見ているか Case3:サラ(40代)

母による子どもたちへの依存が人生に落とした影

サラは、イギリス人の父とイタリア系の母を持つ白人女性。父親が早くに亡くなってしまい、彼女の母上は、自分自身はパーティーアニマルでハイパーセクシュアル(サラの言葉)なのに、サラやその姉には品行方正でストレートA(成績優秀)であることを求める厳しい母だったそう。

母の戦略は功を奏し、サラは成績優秀な上、地元ではボランティア活動に携わり、ティーンになってもパーティーやボーイフレンドに明け暮れることもなく、ずっと「パーフェクトな娘」を続けていたのだとか。

しかし大人になるにつれ、自分の母が、娘たちに精神的に依存しながら子育てをしていたことに気づきます。彼女曰く、「いわゆる、情緒的な近親姦(emotional incest)ってやつ」。母に依存されたサラは、自分よりも母のニーズを満たすことに懸命になり、このことが後々、自己肯定感の低さや慢性的不安感につながっていったそうです。
NYレポート04  アメリカ人女性たちは自分の体をどう見ているか Case3:サラ(40代)

宗教観と性

ところでサラは、20代の頃、トップモデルを輩出する某有名テレビ番組に出演して、最終選考にまで残った美貌とナイスバディの持ち主。インタビュー中も周囲からの熱い視線をずっと感じていました。

当然、年頃になってからは多くの男性に言い寄られたそうですが、母との関係が男女関係にも影を落とし、「クズみたいな関係もたくさんあった」と振り返ります。

NYレポート04  アメリカ人女性たちは自分の体をどう見ているか Case3:サラ(40代)

母のニーズを満たそうとして自分を大事にしてこなかったことに気づいてからは、幼い頃より刷り込まれてきたキリスト教的価値観に疑問を持ち始め、いろいろな本を読み漁ったそうです。そこで東洋哲学に触れるうちに、ヒンドゥ教のYoniのことを知ったといいます。

「世界中の宗教って大概は男性神。男の神が男性の価値観を基に『女は穢れたものだ』というドグマを作って、女性性を抹消してしまった。そして、それに従わなければ罰されてきた」

彼女は、「現代は、神(男性神)への崇拝からシフトし、『お金が神』に置き換えられた」と話し、「お金を持っていれば万能で、何でも手に入るし何をしても許される」と指摘します。そして、「そんな拝金主義の世界では、誰もがメディアが描く成功やライフスタイルを手に入れなければと思い込んでおり、いつもプレッシャーや不安を抱えていると思う」と続けました。

「今こそ、女性は神聖な存在だということを社会は受け入れるべきだと思う。ありのままの自分に価値を認め、慈しんで、自分の本当の力に気づく。そういう女性神の視点が大事なの」

まさに女神のような神々しい笑顔で語るサラなのでした。

 

 

Writer’s Profile

松本 知(Tomo Matsumoto)

フリーランスライター。1999年に留学のため渡米し、コミュニケーション論を学ぶ。2001年よりニューヨーク在住。著書に『Beyond:A Japanese Woman's Perspective of Japan-U.S. Cross-Cultural Love』(Kindle版電子書籍)がある。