NYレポート03
アメリカ人女性たちは自分の体をどう見ているか
Case2:ドリー(80代)

米国在住23年、NYを拠点に活動している、フリーランス・ライターのTOMOです。前回に続き、アメリカ人女性たちが自分たちの体をどう考えているのか、実際に聞いた生の声を紹介していきます。

恋も仕事もバリバリ現役の「スーパーシニア」

今回のヒロインは80代の友人、ドリー(仮名)です。私の母とほぼ同年代の女性にまさかこんなテーマのインタビューすることになろうとは(自分の母とはこんな話絶対にできません……)!

しかし、高齢者だと高を括るなかれ。彼女はもうじき84歳とは思えない体力の持ち主。「テニスコートで死にたい」と豪語するほどの大のテニス好きで、週の半分以上はテニスコートで汗を流し、週一の水泳も欠かしません。そして頭もシャープで、現役のファイナンシャル・プランナーとして仕事をしています。

さらに、80代になった今もデートやセックスを楽しむ強者。デートするのも「どっちかというとただセックスしたいだけ」とさらりと言ってのける、超現役バリバリの「スーパーシニア」なのです。

NYレポート03 アメリカ人女性たちは自分の体をどう見ているか Case2:ドリー(80代)

自分の体には自信の一方で、セックスには罪悪感

彼女が育ったのは1950年代。当時はアメリカでさえ、性についてはまだまだ保守的な時代でした。

「高校生のとき、ボーイフレンドはいたものの、最終的な行為には至らなかったわ。今とは時代が違った」とドリー。

「自分の体へのコンプレックスは全くなかった」と自信たっぷりに語る彼女は170センチメートルを超える長身でがっちりとした骨太体形。その背筋は今もピンと伸びています。若い頃の写真を見ると、80年代に大ヒットした映画『フラッシュダンス』で主演したジェニファー・ビールスにそっくりの美人。明るくオープンなキャラとこの美貌なら、多くの男性からアプローチをされたことは容易に想像がつきます。

けれども、そんな彼女が「体にコンプレックスはなかったけど、セックスにはずっと抵抗があった」と言うのです。

理由は、15歳のときに、父親の親友からプライベートパーツを触られるといういたずらを受けたこと。この友人一家とは家族ぐるみの付き合いだったので、彼女は父にも母にもこの出来事を言えませんでした。

秘密を父親に打ち明けたのは30歳を過ぎた頃。

「父もショックを受けてたけど、相手には何も言わなかったと思う。時間も経っていたしね」

そう、ティーンの頃に受けた父の親友によるこの性的いたずらが、彼女の性生活に長年、影を落としていたというのです。

「どこかでセックスを楽しめないというか、罪悪感があった」という彼女。それが変わったのは30代になってから。

「Your mom is great in bed!」
父に聞いた母との夫婦生活の話が罪悪感からの解放へ

ある日、父親と2人で夜遅くまで話し込んでいたドリーに、もともとオープンな性格の父親が、彼女の母との夫婦生活について話し始めたのだとか。

父親は「She’s great in bed!(ベッドでの彼女は最高!)」と称賛し、続けて「母さんはセックスを楽しんでいる」とも話してくれたそうです。そのときに彼女は、「そうか! ママがそうなんだったら、私もセックスを楽しんでいいんだ!」と前向きな気持ちになり、それまでの性に対する重苦しい罪悪感から解放されたといいます。

NYレポート03 アメリカ人女性たちは自分の体をどう見ているか Case2:ドリー(80代)

それからは、いろいろな男性とのお付き合いを自由に楽しんだのだとか(グループセックスとか、ヌーディストビーチの話とか、なかなか刺激的な話をシェアしてくれました)。

「私、自分の両親が大好きで。子どもの頃、両親が出かける準備をしている様子を、私は2人の寝室のベッドに寝転がってよく見ていたの。母はおめかししてお化粧して、父もバリっとしたスーツを着て。そのときに、『ああ、この2人のもとに生まれてきて良かった』って心底思ったの」

両親との強い信頼関係、安心感が、彼女の屈託のない、素直でオープンな性格形成にも反映されたに違いないと思いました。

いくつになっても現役で、恋にも仕事にも励めたら! 話を聞いているうちに「ドリーに負けていられない!」と大いにインスパイアされたのでした。




Writer’s Profile

松本 知(Tomo Matsumoto)

フリーランスライター。1999年に留学のため渡米し、コミュニケーション論を学ぶ。2001年よりニューヨーク在住。著書に『Beyond:A Japanese Woman's Perspective of Japan-U.S. Cross-Cultural Love』(Kindle版電子書籍)がある。