漢方薬剤師・大久保愛さんが伝える
9月のセルフメディケーション

vol.5 季節の変わり目に効く2つの漢方メソッド

少しずつではありますが、心地の良い風が吹く季節になってきましたね。
9月は年に2度訪れる「陰陽」の大きな変わり目。太陽の位置が秋へと移動する9月23日の「秋分」の日を境に「陰」のシーズンに入ります。そのため、秋分の日までは夏と秋の気候を行き来して、安定しない空模様が続くのが例年の傾向です。
このことから、気圧や気温の変化が頻繁に起こり、変化に適応するために体の中は大混乱。また、秋分の日を過ぎ気候が落ち着いてくると、空気の乾燥が少しずつ進んでいきます。
私たちは地球に住んでいる一員として、環境の変化が毎年同じように起こることを理解し、あらかじめ準備をしたり不調の原因を推測しながら、自らの行動を柔軟に変化させ、健康管理をしていくことが必要となります。

目次
・心と体の傾向
・起こりやすい不調
・悩み解決メディケーション

心と体の傾向

人の体には、外界でいろいろな変化があっても体を一定の状態に保つ「ホメオスタシス」という機能が備わっています。自律神経やホルモン分泌に関わる内分泌系、免疫機能が働くことで心と体を維持しているのです。
ですから気候の変化が大きいこの時期は、自律神経、ホルモン分泌、免疫機能などが乱れ、やる気がなくなったり、イライラしたり、眠れなくなったり、生理不順になったり、PMSがひどくなったり、生理に伴う肌トラブルが悪化したり、風邪をひきやすくなったりと、ちょっと不安定になる傾向があります。

漢方薬剤師・大久保愛さんが伝える 9月のセルフメディケーション

起こりやすい不調

自律神経、ホルモン分泌、免疫機能などの乱れが引き起こす不調に加えて、この時期から気をつけたいのが乾燥です。
秋分の日を過ぎると乾燥した風が少しずつ日本列島にやってきます。肌や口や鼻、目、腸などの粘膜には粘膜免疫に関与するIgAが存在しますが、粘膜が乾燥したり腸内環境が悪くなるとその機能が低下します。
こうした理由から、9月の前半は気候の激変に合わせた自律神経対策、後半には乾燥や腸内環境対策をおこなっていくことがベターです。
腸内環境は肌の状態にリンクするので、指先のひび割れ、唇の皮むけ、乾燥肌によるかゆみなど肌トラブルが気になる方は、腸活をすることが優先事項となります。

悩み解決メディケーション

変化が多い時期には、食事の基本となる、糖質の摂りすぎ、血糖値が急上昇する食べ方、よく噛まずに食べる、満腹まで食べてしまうといった食習慣を控えることなどが、体調管理の大前提となります。
そのうえで9月の前半は、ダイコンやカブ、ナガイモなど消化を助ける食材で栄養の吸収をサポートし「補中益気(体の内側を補い、気を生み出すこと)」します。
後半には、オクラ、メカブ、モズク、コンブ、モロヘイヤなど水溶性食物繊維を含む食材で「潤腸通便(腸を潤し便通を良くすること)」し、腸をキレイにすることを目指していきます。
おすすめの食薬は万能な鳥スープ。作るときに手羽元や手羽先などを顆粒出汁の代わりに入れると、乾燥した粘膜や肌の状態を整えるのに役立ちます。
低分子化されたコラーゲンやビタミンA、ミネラルが豊富なうま味の強い出汁が取れるため、調子が悪いときには試してみましょう。
中弱火で90分以上コトコト煮込むようにすると、煮こぼれたり、鍋が焦げる可能性も少ないので、簡単に料理上手な印象を与えつつ、秋を健やかにスタートすることのできるメニューが完成します。どんな具材や味つけとも相性抜群なので、ぜひ手羽元、手羽先のストックを。

健康や食事については、知っているかどうかで行動の選択肢が大きく異なります。小さな選択の積み重ねが未来の体質を構築していくのです。余裕のあるときには、体にとって有意義となる行動を選択できるように意識できるとよいですね。





Profile

漢方薬剤師・大久保愛さんが伝える 9月のセルフメディケーション

大久保 愛(Ai Okubo)


薬剤師、漢方カウンセラー。北京中医薬大学で漢方・薬膳・東洋の美容などを学び、日本人で初めて国際中医美容師資格を取得。漢方薬局、調剤薬局、エステなどの経営を経て、漢方・薬膳をはじめとする医療と美容の専門家として商品開発や執筆、企業コンサルティングなどに携わる。

公式インスタグラム:https://www.instagram.com/aivonne85/

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