漢方薬剤師・大久保愛さんが伝える
7月のセルフメディケーション

vol.3 夏を乗り切るための、体の土台をつくる

夏至を迎え、太陽は本格的な夏の位置へと移動しました。7月になると雨をもたらしていた分厚い雲たちが徐々に減り、梅雨明けシーズンを迎えます。いよいよ待ちに待った夏ですが、梅雨とはまた違った形で、私たちの体へとダメージを与えてくるでしょう。

【目次】

・心と体の傾向

・起こりやすい不調

・悩み解決メディケーション

心と体の傾向

一方で夏といえば、花火やお祭り、海、キャンプなど楽しいレジャーシーズンでもありますよね。今年の夏を思いっきりエンジョイするために、体調管理を欠かすことはできません。

暑さが増す7月は、日中から夜中まで温度管理が難しかったり、高温多湿で汗が蒸発しづらく体温調整に悩んだりと、自律神経を乱してしまうこともある季節です。漢方医学では、梅雨明けまでは「脾」が弱りやすく、梅雨明けすると「心」が弱りやすいシーズンに移行すると考えられています。

そのため、梅雨明け前までは特に消化器系や水分代謝を助けることで「脾」を支え、梅雨が明けたら紫外線やストレスなどによる活性酸素対策をとることで「心」を支えるケアをおこなっていくと心と体の状態は整いやすくなります。

起こりやすい不調

最近、日々のエアコンの設定温度が難しくなり、熟睡できない夜が増えてはいないでしょうか。睡眠の質が低下すると朝からだるさを感じたり、日中でも横になりたいくらいの疲れを感じることもありますよね。

気候の変化に伴って汗をかく量も増えていきます。このとき、水分やミネラルが汗で消耗されてしまうことをご存知の方は多いと思います。では、みなさん、十分に水分やミネラルを補給できているでしょうか?

水分やミネラル分が不足していると、筋肉や神経伝達物質に支障が生じ、足がつりやすくなったり、顔の筋肉がピクピクし始めることがあります。このような症状が現れる前に、温度や水分の種類、汗として消耗されたミネラルがきちんと摂取できているかをチェックしましょう。

また、この時期に自律神経が乱れると「心」が弱り、体に熱がこもりやすく、のぼせや手足のほてり、不安感、夜に目が冴えてくる、焦燥感といった不調を感じることがあります。

暑苦しくて、バテている状態では、例えばクーラーの温度を思いきり下げたり、冷たい飲み物ばかり飲むなど、その瞬間の過ごしやすさにだけ注目して行動することが増えてしまうかもしれません。ですが、毎年暑さが増している、この猛暑と戦うためには、1週間後、2週間後、そして来月の元気に役立つ行動を、いま実践しているかという意識を持つことも大切です。

未来の自分をマイナスに変化させるのではなく、プラスに向けられるようアシストできる生活を送りたいですね。


悩み解決メディケーション

持久力が必要となる夏越えの準備として、この時期には体の土台をつくっておきましょう。

まずは、私たちは食事と呼吸で元気をつくっているということを、いま一度認識することです。

そして、胃腸の働きを助け、栄養の消化吸収を整えましょう。胃腸に負担をかける食材を摂ることを控え、消化を助けるようによく噛むことを意識します。

また、呼吸が浅くなると自律神経が乱れやすくなるので、無意識のうちに猫背になっていないかチェックしたり、気がついたときには深呼吸をしてみること。寝るときに腹式呼吸をするのもよいでしょう。


おすすめは、オクラやモロヘイヤ、キャベツ、ダイコン、カブ、ナガイモ、梅干しなどの消化を助ける食薬を取り入れること。

併せて、汗で消耗したミネラルを補うために、肉や魚介類、豆類などに多いタンパク質、ビタミンB群、ココナッツオイルに含まれる中鎖脂肪酸などを摂るのもよいでしょう。これらの栄養素は、暑さで奪われがちな気力を回復するのにも適しています。

気候の変化が激しいときには、自分の行動を柔軟に変化させることで、いつでも元気で快適に過ごせるようにしていきましょう。





Profile

大久保 愛(Ai Okubo)

薬剤師、漢方カウンセラー。北京中医薬大学で漢方・薬膳・東洋の美容などを学び、日本人で初めて国際中医美容師資格を取得。漢方薬局、調剤薬局、エステなどの経営を経て、漢方・薬膳をはじめとする医療と美容の専門家として商品開発や執筆、企業コンサルティングなどに携わる。

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